村上帝、月明き夜、清涼殿の上の御座にて、水牛の角の撥にて玄象を弾きすまして…  「十訓抄」
宮中から聞こえる琵琶の音。その昔水牛角の撥で弾かれたという…

水牛は、広くユーラシア大陸で家畜家畜とされ、農耕、食用として利用されてきました。
また水牛の特徴である、大きな角は古来工芸品の材料として利用されてきました。
独特の透明感、べっ甲に似た黒と黄色のコントラストは異国の風情に満ちた、奢侈品でもありました。


画像は紀州徳川家伝来の水牛角製の撥です。

水牛角はそれぞれ個性があります。
二つとして同じものはありません。
まさに一期一会。
べっ甲のようなもの、虎斑のようなもの、ほとんど黄色の無地…乳白色のもの。
表皮に近いものは乳白色の霞がかかり、特に反発が強い部分でもあります。

水牛角は、人間の爪や髪の毛と同じコラーゲンで組成されています。よって絃に余分な摩擦を生じさせず、切れにくいメリットがあります。またその緻密さと硬度を生かし、それぞれの奏者のお好みに応じた厚み、反発力を追求することが可能です。
都人が思いをはせた異国の風を、いまお手元に。令和の世にこだわりのお品として仕上げました。
丹念に磨き上げた水牛角は、いつまでも触れていたいほどの滑らかさです。

特注にて正倉院蔵 紅牙撥鏤撥仕様も謹製いたします。五弦琵琶の華麗で繊細な音色が聞こえてくるようです。

撥先の形状、撥幅も特注により調製いたします。左から江戸型、楽家録型、上古型と通称しています。楽琵琶用は江戸型、楽家録型が適しています。